訴状

     請求の趣旨

1 被告らは、原告に対し、各自金550万円及びこれに対する訴状 送達の翌日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え

2 被告B株式会社およびCは連名で、原告に対し、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の各朝刊社会面広告欄に2段抜きで別紙謝罪広告文案記載の謝罪広告を掲載せよ。

3 訴訟費用は被告らの負担とする

との判決並びに仮執行宣言を求める。



     請求の原因

第1 当事者

1. 原告は、昭和41年生まれで26歳の女性である。原告は、平成2年5月、被告株式会社C(以下「」被告C」という。)に、アルバイトとして採用され、同年11月、正社員となり、横浜営業所において事務及び製造の補佐に従事していた。

2 . 被告B株式会社(以下「被告B」という。)は、大手建設会社であり、被告Cは、建築土木の商品開発などを業とする被告Bの100%子会社である。
  被告Dは、昭和17年生まれで現在49歳の男性で、被告Bの社員であり、被告Cの横浜営業所長として被告Cに出向していた。


第2 被告Dの加害行為

 原告は、平成2年秋ころから平成3年2月19日までの間、上司である被告から、職場において継続的に、セクシュアルハラスメントを受け、癒しがたい精神的被害を受けた。被告Dの原告に対するセクシュアルハラスメントは徐々にエスカレートした。すなわち、

1  平成二年秋ころから、被告Dは、原告の席の近くの通路を通るおり、たびたび肩を叩いたり揉んだりした。また、被告Dは、同様にして当時ロングヘアだった原告の髪を何度も触った。そのころ、原告は、腰を痛めたことがあったが、被告Dは、「温湿布がいいんだよ。」「私の手は人の手より熱いんだよ。良くなってきた。」等言いながら、必要ないのに、わざわざ原告の腰を触った。

2  同年12月、男性の社員が1人退職し、室内に原告と被告Dが2人だけになる時間が増えると、被告Dの原告に対するセクシュアルハラスメントは、次第に悪質になった。初めは、肩を叩く程度だったのが、両手で揉むようになり、髪を撫でる程度だったのが、束ねて玩ぶようになった。原告は、被告Dに髪を触られないように結んだりしたがそれでも、被告Dは原告の髪を触ることを止めなかった。原告は次第に被告Dが原告の席の近くを通ることが苦痛になった。

3  平成3年2月6日、原告は、被告Dから、「(接待のための)新しい店を開拓したいので。」と酒席に誘われた。原告は、上司の誘いであるので断ることもできずこれに応じた。帰路、店を出て駅に向かって歩いているとき被告Dは突然、「今日はありがとね。」と言いながら、原告の肩を抱きよせた。原告は非常に苦痛であったが、「酔っぱらっているので怒っても仕方がない。」と思いながら、「あっちが地下鉄の駅ですよ。」等と言って、被告Dの腕を振り解き、駅へと急いだ。
 その後1週間ほどしてまた、原告は、被告Dに再び酒席に誘われた。前記のようなことが再度行われる危険を感じた原告は、被告Dに「みんなも誘いましょう。」と言ったが、被告Dは、「みんな新婚だから帰りが早いだろう。」と応じなかった。しかし、結局、原告はアルバイトの男性に同行してもらうことにし、同種の被害を受けずにすんだ。

4  平成3年2月19日、午前11時50分ころ、他の社員が外出し、来客も帰り、横浜営業所の室内には、原告と被告Dの2人だけとなった。被告Dは、机の前に立っていた原告に後ろからいきなり抱きつき、「Aさんを一度抱きしめたかった。Aさんかわいいから。」等言いながら、原告の首筋に唇を何回も押しつけ、原告が着ていた防寒着、作業着の中に手を入れブラウスの上から胸に触り、ズボンの上から腰を触った。原告の顔に何度となく唇を押しつけ執拗にキスし、無理やり原告の顎を掴んで原告の口を開けて自分の舌を入れようとした。さらに、荒い息遣いで腰を原告の身体にぴったりと押し付けたまま上下に動かし、指を原告の股の間に入れ陰部をズボンの上から触った。
 原告は、これに必至に抵抗し、被告Dの猥褻行為から胸や腰や口をガードしようと腕を胸の前で固く組んだり、肘を張ったり、顔を背けたり、手を払い退けようとしたが、被告Dは、原告の防御の姿勢に合わせて、原告の後ろから前に回り、また、後ろに回る等せわしなく動いて、別の猥褻行為を始め、被告Dの原告に対する猥褻行為は、執拗に続いた。
 原告は、ただひたすら早く止めてほしいと思い、できるだけ平静な態度を装いやっとのことで、「お昼過ぎちゃいますよ。」と言った。被告Dは、にやにやしながら「ああ気持ちよかった。いい子だと気持ちいい。やられた方はいい迷惑ってか。」「こんなことしたら、Aさん泣いちゃうかと思った。仕事辞めないでね。悪かったね」と言って、午後0時10分ころ、ようやく原告に対する猥褻行為を止めた。


第3 被告B及びCの対応

1  原告は、どうしてよいかわからず、午後2時ころから、事務所の近くの工場に閉じこもって、考えあぐねていた。原告は、初めは、黙って済まそうと思った。しかし、時間が経つにつれ、だんだん悲しくて、悔しくてたまらなくなった。そして同僚に言おうと決心した。夕方、男性の社員が帰ってきたので、事情を話そうと思ったが、こらえ切れずわあわあ泣いてしまった。男性の社員は、話を聞いて、「なんとかしてあげる、言っておくよ。」と言った。原告は、翌日から3日間、ショックで出勤することができなかった。
 同年2月22日、被告Dは、19日に原告に対し猥褻行為をしたことについて認め、謝ったが、口先だけのものだった。原告の精神的苦痛はこれによってやわらぐことはなかった。これ以降も、被告Dは、原告をジロジロ見てニヤニヤする等反省の色が見られなかった。

2  同年3月14日、原告は被告Cの社長に直訴し、被告Dの処分を求めた。しかし、社長は、「男というものはばかなものでいつまでも子供のようなところがあるものだ。大目に見てくれないか。言っておく。」等言い、原告の精神的苦痛はまったく理解されず、会社による被告Dに対する適切な処分がされないことで、原告は、いっそう深く傷つけられた。

3  原告は、その後、職場内で被告Dと2人きりになりそうになると工場に逃げて工場で仕事をする等して2人きりにならないようにして、勤務したが、自己の意志に反し職場で無理やり猥褻行為をされた屈辱感、精神的苦痛は癒えることがなく、その苦痛を与えた当人である被告Dと同じ室内で、同じ空気を吸うことが耐え難くなった。
 被告Cは、原告の訴えにも関わらず、被告Dの職場を移動させることをしなかった。

4  適切な処分がなされなかったことにより、原告は、本件が問題となって以降、男性の多い職場の中で次第に厄介者扱いされるようになり、職場は原告にとって居辛い雰囲気になり、原告は、いたたまれず、同年7月23日、退職願を提出し、同年8月31日退職のやむなきに至った。


第4 セクシュアルハラスメントによる被告らの責任

1  被告Dの前記第二の行為は、上司である立場を利用して行われた典型的なセクシュアルハラスメントであり、原告は、これにより、性的自由を侵害され、働き続ける権利を奪われ、耐え難い精神的苦痛を受けた。その痛手は、いまもって癒されない。
  したがって、被告Dは、民法709条により、原告に対し、損害賠償責任を負う。

2  @ 被告Bは被告Dの雇用主であり、使用者である。被告Dは、職場において、職務に関連して、原告に対し、セクシュアルハラスメントを行っているので、被告Bは、民法715条により、原告に対し損害賠償責任を負う。

  A 被告Dは、職場において、職務に関連して、原告に対し、セクシュアルハラスメントを行っているので、被告Cは、民法715条により、原告に対し損害賠償責任を負う。

3  @ 被告Bは、労働契約上の雇用主として、被告Dに対し適切な処分をするべきであったにもかかわらずこれを行わず、問題を放置した。このため、原告をめぐる職場環境が悪化し、原告の名誉は、著しく傷つけられた。これは、被告Bが被告Dに対し適切な処分をしなかった、Cの社員に対し正確に事実を説明しなかったがために生じた。
  したがって、被告Bは、民法709条、723条に基づき原告の名誉回復のための措置すなわち謝罪広告をなすべき責任を負う。

   A 被告Cは、被告Dの出向先として、本件について適切な処置をするべきであったにもかかわらずこれを行わず、問題を放置した。このため、原告をめぐる職場環境が悪化し、原告の名誉は著しく傷つけられた。これは、被告Cが、被告Dの処分について適切な対処をしなかった、Cの社員に対し正確に事実を説明しなかったがために生じた。
   したがって、被告Cは民法709条、723条に基づき原告の名誉回復のための措置すなわち謝罪広告をなすべき責任を負う。


第5  損害

1  慰藉料
 原告は、性的自由を侵害された屈辱感とともに、本件以降人間に対する不信感を抱くようになりこれはいまもって拭いきれないのであって、精神的苦痛は癒しがたく甚大である。
 また、原告は、本件により、被告Cを退職せざるをえないことになり、ものを作ることに喜びを感じ、正社員としてやりがいを感じていた職場を失うことになったのであり、働き続ける権利を侵害された。
 以上の事情により、原告の損害は金500万円を下らない。

2  弁護士費用
 原告は、平成3年10月、本訴の原告訴訟代理人である弁護士らに依頼して、被告らに対し、厳正な処分、謝罪、慰藉料の支払いを求めたが、被告らは、原告の要求に応じなかった。
 そのため、やむなく、原告は、原告訴訟代理人らに依頼して本訴を提起する。本件訴訟追行のため、必要な弁護士費用は、金50万円を下らない。

3  よって、原告は、被告らに対し、各自金550万円及びこれに対する訴状送達の翌日から支払済まで年5分の割合による金員を支払いを求める。
 さらに、被告Bおよび同Cによる原告に対する名誉毀損は、損害賠償によっては回復できないので、被告Bおよび同Cに対し、請求の趣旨第2項記載の通りの謝罪広告の掲載を求める。




     謝罪広告

 平成3年2月ころ、株式会社Cに出向勤務していたB株式会社社員が貴殿に対して行ったセクシュアルハラスメントについて、当社らが適切な処置を怠ったことにより、貴殿の名誉を毀損し多大のご迷惑をおかけしました。ここにつつしんで謝罪いたします。

     平成   年   月   日

              東京都港区
                        B         株 式 会 社
                        右代表取締役  ○  ○

             東京都中央区
                        株 式 会 社    C
                        右代表取締役  ○  ○


      A        様



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