横浜セクシュアルハラスメント裁判を支える会ニュース  bP

                   1993・2・15 発行 横浜セクシュアルハラスメント裁判を支える会事務局




☆ 発行にあたって

 横浜セクシュアルハラスメント裁判とは、1992年7月、横浜に住む女性が、上司のセクシュアルハラスメントによって退職に追い込まれたとして、上司と会社に対して損害賠償と謝罪広告を求めて起こした裁判です。
 同年4月、福岡で、上司のセクシュアルハラスメントは違法であり、会社にも使用者責任があるとした判断が下されました。訴えた女性の全面勝訴といってもよい内容でした。この判決で勇気を得たように、セクシュアルハラスメントに抗議の声を上げる女性たちが増えています。横浜のA子さんもそのひとりです。彼女は、金銭解決だけでは私の怒りは償えない、として謝罪広告もあわせて要求しています。
 女性の立場から彼女を支え、セクシュアルハラスメントを許さない社会を作りたいという思いで私たちは「支える会」を結成しました。微力ですが、勝ちたいと心から思っています。ご支援を
よろしくお願いします。                                                  (事務局)



☆ 原告からのあいさつ

 今回のテーマは"今の思い"だそうだが、さて、何を話そう。‥‥‥事件発生から2年、職場を離れて1年半、提訴から半年たつのだが、私はいまだに原告らしさが身についていない。全くホントにこれで大丈夫なのかと思うくらい深刻さに欠けるところがある。それは弁護団から「あなたは私のドーシヨウモナイ(笑)依頼者の中でも下から2番目よ」と言われるくらいのものだ。しかし世の淑女や紳士はそうは思ってくれないようだ。若い女性が自身の名誉回復のために大企業を相手取って裁判を起こした、さてその原告とはどんな女性なのか‥‥‥世間の耳目は集まる。が、本人は体重計の目盛りと今日のヘアスタイルが最大関心事の、ごくフツーの女の子だったりするのだ。
 ―――多くの人々は勘違いをしている。原告だからって考えることが特別なわけではない。怒りも悲しみも一般の人と変わらないのだ。誰だって自分の意志に反して苦痛に感じることを強要されれば腹が立つだろう。それで私は怒ったのだ。今後も怒るべき事態が発生すればいつでも怒る用意がある。
 ところで「怒り」という感情は「喜び」や「悲しみ」より他人に理解されにくいと私は考えている。増して「痛み」ともなると、接待の席でごちそうになった大トロの味を家族に説明する父親より努力が要るのではないかと思う。だから私は、私の心の内をわかってもらおうとは思わない。私の怒りの原因を知って、あなたがた自身で怒っていただきたい。もしその怒るところが私のそれと一致するのであれば、どうぞ私を応援していただきたい。「大変だったわね」ではなく「これからが大変ね」と言ってくれる真の理解者が増えることを、私は期待するのみである。
―――追記――― 今の季節、空気が乾燥していて大変火災が発生しやすい。原因は暖房器具の故障だったり、自然発火だったり、放火ということもあり得る。だがいずれの場合においても、まず、消防署に連絡を取り従業員やお客様の避難誘導に勤めるのが先決だろう。同時にスプリンクラー、防火シャッターを作動させ、被害を最小限にとどめるべく消火活動を行うべきである。そして鎮火後は再び火災が起きぬよう、万全の対策をとるのが賢明な措置だろう。防火対策室を設けるのも一計だ。いずれにせよ、起きてしまったら的確な初期消火が一番だと私は思いますがね。



☆ 裁判報告


    1992年10月23日 第1回 口頭弁論

 訴状陳述(といっても訴状を朗読するわけではなく、裁判長が「訴状陳述」というと原告訴訟代理人が「はい」と答え、訴状を陳述したと扱う)、答弁書陳述に加え、原告本人、原告訴訟代理人T弁護士が意見陳述を行った。(意見陳述を認めるかどうかは基本的には裁判所の訴訟指揮の裁量範囲にあるセクシュアルハラスメントの事件で意見陳述をしたいと求めた場合、その取り扱いは裁判所の感性によって様々になるだろう。)本件では認めないとは言わなかったが、10分とはけちだった。でも意見陳述の時間で裁判所のセクシュアルハラスメントに対する理解の程度が計れるわけではないし、問題はこれからであるので、悲観せずにやって行こう。
 時間は短かったが、原告本人の意見陳述はすばらしかったと思う。実は原稿を準備するにあたって、その素案を私が書くことになっていた。しかし結局彼女が自分で全部書き直した。私が渡したものより明らかに数倍すばらしかった、やはり本人には勝てないと当たり前のことを改めて認識した。本人が最良の代理人であり、最良の証拠なのである。 もちろんT弁護士の意見陳述もすばらしかった。書類だけでなく中身が裁判所に届きますように(祈る)。


   1992年12月13日 第2回 口頭弁論

 原告準備書面提出。

 あっという間に終わってしまったという感想に申し訳ないという思いしきり。
 第1回、第2回とも口頭弁論という傍聴する側にとっては決して面白いとは言えない手続きであるにもかかわらず、予想を上回る人たちに傍聴していただくことができた。裁判所の雰囲気はわりとさっさと裁判を進めるかなという感じ。
 いましばらくはおもしろいとはいえない手続きにつきあっていただけるととても心強いのです。
(毎回裁判終了後報告集会をやっています)ご支援よろしくお願い致します。(なお、各書面の内容については、別の機会に報告したいと思います)                                                (渡辺)

 次回公判は3月12日(金)10時からです




☆ 12・5「横浜セクシュアルハラスメント裁判を支える会」発足集会

 「横浜セクシュアルハラスメント裁判を支える会」の発足集会が、12月5日に鶴見労働センターで行われました。渡辺、高岡弁護士の経過報告の後、原告は、「こんな私でよかったらどうぞ支えてみてください」と挨拶。上京してくれた「福岡裁判を支援する会」の方からも挨拶をうけました。(支援する会は現在は解散し、相談機関づくりに向けて準備中とのことです。)また、在職をしながら上司のセクシュアルハラスメントに抗議をしている小糸製作所の女性たちからも、会社とのやりとりの状況を話していただきました。

 討論の中では、11月に栃木で実名裁判を起こしたKさんのことが話題になりました。「実名だから堂々としている、匿名はそうではない」とマスコミ等に言わせないようにしたい、福岡の裁判は匿名であってさえ本人のプライバシーがかなり詮索された、少なくとも両方の選択が可能でなければならない、等の意見が出されました。

 集会参加者は35名、かなりの方が2次会にも参加してくださいました。「こんなに大勢の人たちが取り組んでいるのがうらやましい」と小糸製作所の2人、「福岡裁判のスタートの時と比べて雰囲気がリラックスして明るい」と福岡のSさん、とりあえずは元気にスタートを切りました。この元気と明るさのまま勝訴まで走り切れればいいなと思っています。とりあえずは、「支える会」への参加をよろしくお願い致します。

 メッセージを下さった東京ユニオン、セクシュアルハラスメントと闘う労働組合ぱあぷる、性暴力を許さない女の会の皆様ありがとうございました。                                               (パラソル)



  集会のお知らせ 
「セクシュアルハラスメント現場からの報告」

     Kさん(宇都宮)
     KIさん(熊本)
     Aさん(横浜)   の訴えを聞く

 日時 2月26日 6時 ― 9時
 場所 飯田橋セントラルプラザ11階 中央労政会館第1会議室





< 資料 > 準備書面(一)より(92・12・18)

 謝罪広告について

1   名誉侵害

 被告会社らは被告Dの使用者として、被告Dの原告に対するセクシュアルハラスメントについて適切な対処をすべき義務を負っており、少なくとも、被告Dの配置転換、他の従業員に対する正確な事実の公表、就業規則等に基づく適切な処分をすべきであった。それにもかかわらずなんらの対処もせず、かえって原告に対し被告Dのセクシュアルハラスメントを受認するよう要求する態度に終始することによって、以下の通り原告の名誉を毀損した。

1. 秩序を破壊したものとして扱われたことによる名誉侵害(略)
2. 職場から排除されたことによる名誉侵害

 被告会社らは被告Dのセクシュアルハラスメントについて適切な対処をしなかった、そのことは、被告会社らが原告の訴えを有害なもの、少なくとも無視すべきものと判断したことを意味するとの点は前述したとおりであるが、そのような被告会社らの判断は、とかく横並び意識の強い日本的職場環境においては、原告を支援し協力するものが、職場において不利益を被る立場に追いやられる可能性が高くなると言わざるを得ない。
 そのため原告は次第に職場に居辛くなり、厄介者扱いされるようになり、いわば村八分としての扱いを受け孤立した。
 名誉とは常に社会的なものであり、人間は社会生活の中で名誉を形成する。従って職場での交流からの排除は名誉の基礎を奪い、必然的に名誉の毀損を伴う。
 原告は、被告会社らの判断の結果職場から排除されたことによって名誉を著しく侵害された。

2   損害の継続

 原告は、被告B及び同Cが適切な対処をしなかったことにより、社内の人々に真実を理解してもらえないまま、1991年(平成3年)8月31日をもって退職せざるを得なかった。また、被告Dは、本件セクシュアルハラスメントについて、真実と全く異なる弁明をしている。
 従って、名誉侵害による原告に損害はいまだ継続している。

3   謝罪広告の必要性

1. 被告会社らの行為により、原告は名誉を著しく侵害され退職せざるを得なかった。これにより原告はやりがいを感じていた仕事を奪われ、同僚を失った。被告会社らの行為は、職場で働くことにより自己表現を図ろうとする原告の意欲を奪うものである。

2.被告会社らが適切な対処をしなかったその根底にあるものは、働く女性の譲歩忍耐によって職場関係の和を図ろうとするいわば男性中心の伝統的職場観である。
 これは、憲法24条に照らして当然克服していかなければならないものであるが、社会に幅広くしかも根強く残っていることも厳然とした事実であり、被告会社らだけでなく、従業員も右伝統的職場観をもつが故に原告を職場の秩序を破壊するものと扱い、またいわば村八分の扱いをしたものといえる。従って、原告の名誉を真に回復するためには、右伝統的職場観を払拭することが不可欠であり、その手立てとして、現時点では金銭賠償では不十分であり、被告会社らの責任が明確に表明される謝罪広告が必要でありかつ妥当である。



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