クラブA bU 

                   1994・2・10  発行 横浜セクシュアルハラスメント裁判を支える会事務局



☆ 裁判報告

1993年12月10日 第7回公判

 傍聴人約25名。裁判官の女性が1人男性に替わって裁判官は裁判長の女性1人と男性2人となった。ちょっとがっかり。
 いよいよ今回は、被告の加害者とテクネット側から加害者が証人として出廷した。
 はじめに加害者の代理人からの主尋問。次にテクネット代理人からの尋問。最後に原告側からの反対尋問が行われた。
 主尋問では、最初に加害者は会社をなぜ退職したか。というもの。答えは、持病の糖尿病が悪化したからという。ほんとかしら。質問の途中でこの弁護人、「お顔の色が悪いですがお具合が悪いのじゃないですか」などと気を遣っていた。何が言いたいのかしら。
 加害者は予想通りセクハラが頂点に達した2月19日の昼休み前のわいせつ行為を否定。Aさんに謝ったときは、テーブルに手をついて謝ったという。
(嘘ばっかり。実際は、足を組んでふて腐れて威張った感じだった)。その前の2月6日飲みに誘ったのは接待のための新しい店を開拓する為。帰り際に肩を抱き寄せたことも否定。日ごろから髪や腰を触っていたことも否定。
 しかし、原告側からの反対尋問で、昼休み前のわいせつ行為を否定した嘘(喜びのあまり抱きついたというもの)の不自然さが明らかになった。座っていたAさんを立たせて抱きついたというのだ。(これでも十分痴漢だとわたしは思いますが)
 1度目から1週間しか経っていない2度目にAさんだけをお酒に誘ったことの理由を聞かれて加害者の答えたには、「知人にたまには女性を誘わなくちゃ」とアドバイスされたからという。原告代理人は鋭く、「たまにはって1週間前に行ったばっかりですねえ」(飲みに誘った動機がしれてくる)その時7時に店を出た時、明るかったと加害者はいう。(2月でその時間に明るいわけがないじゃない。)矛盾する点が浮き彫りになった。
 Aさんは、嫌味で嘘つきの加害者の証言にも常に冷静沈着とした態度。「何を言われても怒らないように」と事前の打ち合わせで弁護人からいわれていたそうだが、よく我慢したと思う。Aさん、ご苦労さま。
 だけど、加害者の答えには本当に腹が立った。気が強いと思った、歓送迎会のAさんの自己紹介が変わっていただのと言っていた。何でそんなこと言うのか、それがどうしたの、という感じだ。他に自分が謝ったときAさんが、ミニスカートをはきタバコを吸っており、事務所からウイスキーの瓶を下げて「やった。やった」と出てきたと聞いているという。これも嘘ばっかり。実際は、Aさんはジーパン姿だったのだ。よくまあこんな話を捏造できると感心する、裁判官がこの男の証言を信じないことを祈るばかりだ。まさか鵜呑みにするわけはないと思いますが。前回までのきちんとしたAさんの証言があるのだから。
 次回は、原告側から加害者への反対尋問の続きです。いよいよ山場。ぜひ多くの方の傍聴をお願いします。加害者をじろじろじ〜ろと皆で一緒に眺めましょう。

  次回の公判  3月11日(金)午前10時30分

      横浜地裁501号法廷です




☆ すてきなAさんがんばってね!

     連合滋賀によるセクシュアル・ハラスメントと闘うAさんを支える会  フィールド

 セクシュアル・ハラスメント裁判が全国で次々と起こっているのは、先ずは、元気で主張する女が存在することだと思い嬉しくなります。
 昨年(12月10日)の横浜裁判に初めて傍聴させてもらい、被告Kを見た瞬間、大阪の裁判を思い出してしまい身震いしました。しかし、元気で明るくたたかっておられるAさんに会えて、とても勇気づけられました。すてきなAさんを好きになってしまいました。
 こちらでもはじまった連合滋賀セクシュアル・ハラスメント裁判のAさんにも大きな力を与えてくれることでしょう。
 労働裁判といういわば、社会的に弱い立場である労働者を守る組織、労働組合のなかで起きた事件で、女性差別か日常化する上に起きた暴力事件です。しかも、組織内では問題にされないという悔しい思いをしたAさんは、この事件をセクシュアル・ハラスメント事件として闘う決意をしました。かつては仲間であった男が、組合幹部と職員という上司と部下という縦の関係になってしまい、ことあるごとに「年をとった女はいらない」といういやがらせ、お茶汲み接待、コピー取りから私用までが業務命令されるという組織になってしまった労働運動も、まさに男社会で、会社組織と同じように権力構造が作られてしまったことを示します。踏まれたAさんが勇気を持って「痛い!」と声を上げることからしか本当の組合民主主義が作れないのかもしれません。
 全国で闘っているセクシュアル・ハラスメント裁判の皆さんと共に闘っていきたいと思います。




☆ 学習会参加感想

 昨年10月、労働省が二十一世紀職業財団に委嘱していた、セクシュアル・ハラスメントに関する研究会報告(女子雇用管理とコミュニケーション・ギャップに関する研究会報告)が発表された。支える会でこの学習会を行うというので、私も参加させてもらった。学習会では、この報告がセクシュアル・ハラスメントの定義を狭くし、枠をはめることになるのではないかという危惧が多く出された。
 私も労働省発表の概略をざっと読んだ段階では、その危惧を強く持ったし、特に報告の「問題解決にむけて」という項に「女性が毅然とした態度をとること」とあることには怒りすら感じた。新聞報道では、研究会報告が「セクシュアル・ハラスメントの概念が無限定に拡大されるおそれあり」として、その概念規定に「看過できない程度の不利益や被害が現実に生じていること又は生じようとしていることが重要」と盛り込んだことを報告の特徴であると強調したものが多かった。私などはこの第一印象を含めて「看過できない程度」とは誰が判断するのか、目に見えない不利益や苦痛はどうしてくれるのだと、強い不満を抱いた。その後、報告の全文をよく読んでみると、各項に但し書き的な書き方で説明が付されていて、結構広くセクシュアル・ハラスメントを規定しているようにも思える。例えば、「性的な性質の言動」について、不特定多数のものに向けられたもの等も含む、とか、著しく悪質な言動であれば、必ずしも反復継続性を重視する必要はないとか。「不快か否か」の基準についても「一般通常人」(男も含む)ではなく、「通常の女性」の感じ方を基準とするとし、被害者の女性が平均以上に感じやすい女性の場合は「通常」の基準にこだわることはないとか、随所に幅のある書き方をしている。
 つまりは、私たちが企業や男に対するときには「労働省の見解」として活用できるということだろうと思う。問題は、この報告を受けて労働省が何をやろうとしているのかなのだが、現時点では企業への指導の強化とかで、とりたてて何もしようとしていないらしい。報告書の巻末に諸外国の法制化の実例までくっついているのに、何のためにこんな報告を出したのか?
 私たちの手でセクシュアル・ハラスメント防止法をつくりたいと思う。                   (タートル)

  次回学習会のお知らせ  

    次回は、2月16日(水)午後7時 みずら事務所にて

  セクシュアル・ハラスメント防止法について
   資料…労働省のパンフレット
       都内のセクシュアル・ハラスメント労使協定
       第二弁護士会が提案している法案 etc

※ 労働省にあの定義を発表してから、その後の予定を聞いてみました。
 企業への説明会をしているとか、パンフレットを作成したとかビデオをつくるとかいっていました。
 法制化については、曖昧で研究会も解散したとのことです。どこまでやる気があるのか疑問に思わざるを得ません。



☆ 宇都宮裁判

 12月9日、第5回公判は満席の301号法廷で、緊張したなかで行われました。この日はKさんへの尋問がまず弁護人から行われ、セントラルファイナンスの度し難い社風と、加害者Bの気持ちの悪い対応が浮き彫りにされました。
 Kさんの証言によれば、Bは常日頃女性差別的言辞を吐き、彼の上司はそうしたBを容認する人格であったこと、さらに隠然とした派閥争いらしきものもあり、Kさんの働く意欲を奪い取ったのです。
 なかでも印象的だったのは、BがKさんの車の後をつけてきたことや、Bの上司の発言で「(女は)成績が悪くてもソープ(ランド)で働ける」とか、Bの行状が明らかになった後にもKさんとのBの同行を「Bを助けてやってくれ」と2度に渡ってKさんに要請したことなど。
 信じられないようなことを、平然とのたまうこの無神経さを、本当になんといってよいのか。 気分が悪くなってしまい、つくづくKさんの怒りはもっともだ、どんなにきつい毎日だったろうか。Bや支店長のまったくひどい対応を自覚させるのは、並大抵のことではない気がする。まったくこれほどまでにロクでもないヤツが、ゴロゴロしているこの世の中。女であるだけで苦痛を強いられてしまう。
 冗談じゃない!なめるんじゃない!(怒りは続く…)

 次回公判は、2月10日、午後1時15分より、宇都宮地裁301号法廷でKさんへの尋問が引き続き行われます。
 ぜひとも傍聴に参加されますよう、会員のみなさんに呼びかけます。




☆ 12月4日 Kさんを励ます会

 宇都宮のKさんが裁判提訴して1周年を迎えるということで、東京・品川の南部労政会館で、12月4日、「Kさんを励ます会 ― あなたならどうする」という集会が開かれました。支援の会の主催。司会は弁護士の福島瑞穂さん。
 福島さんはKさんとの出会いと実名訴訟となった経緯を語りました。渡辺智子弁護士は裁判の経過と現状を報告。
 福岡のセクシュアル・ハラスメント裁判で勝利判決を勝ち取った原告のA子さん、仙台で妊娠解雇攻撃と闘っているK子さんが連帯の挨拶をしました。福岡のA子さんは、匿名裁判としてやったことの意義と自分自身が感じた歯がゆさについて語りました。性の問題がからむと個人のプライバシーが暴かれていく被害のなかで、風当たりを真っ向から受けるのを避けるために「匿名」を貫き、勝利を勝ち取ったことは大きな成果です。そして無数のA子さんが出るきっかけとなったわけですが、確かに自分のアイデンティティがなくなるような感じも味わうのでしょう。私たちが支援している横浜のAさんは、仕事で遅れてきたせいもあるのか、Aという仮名への反発もあるのか、「私は○○です」と自己紹介。あれれと驚いたのは私ひとりではなかったかな?
 また、福岡のA子さんの発言の中で、「裁判は長距離マラソンのようなものだから、ゆっくりとあせらずに」というのは実感だなと思いました。
 私たちの「Aクラブ」もAさんと一緒にゆっくり走るしかないわよねぇ。
 また、T弁護士が、労働省の「女子雇用管理とコミュニケーショ・ンギャップに関する報告書」(いわゆるセクハラガイドライン)についての説明をしましたが、事前の学習会の成果でよく理解できました。
 Oさん(参議院議員)が駆けつけてくださって、セクハラ防止法についての提起をしました。救済と予防が相互に可能な立法化ができたらどんなに嬉しいだろう。
 そして何よりも、Kさんの成長(?)ぶりには目をみはってしまいました。闘うということ、闘い続けることは、こんなにも女をしたたかでキリリとさせるものなのかと、つくづく感嘆!そして肩ひじはらずに生き生きと闘えれば、きっと勝てるぞと確信しました。                                                         (Q)



☆ 女のホットライン、開始から3ヶ月(東京)

   「沈黙を破って」という落合恵子さんの記念講演に励まされて、ホットラインの活動がスタートしてから3ヶ月経ちました。
 新聞報道が功を奏したのか、はじめの数回はとにかく電話が鳴りっぱなし。不安でいっぱいの私たちが順番を譲りあう暇もなく恐る恐る受話器を取って「女のホットラインです」と言ったのが10月末の第1回、以降12回ほどの回数を重ねてきました。
 相談の内容で1番多いのは夫婦関係の問題。心身の悩み、セクシュアルハラスメント、サラ金の問題などがこれに続くといったところでしょうか。いくつかの要素が絡み合っていて、何が問題なのか一緒に整理してゆくことが必要なケースや、緊急の対応が必要で「みずら」を紹介したケースもありました。
 仕事で相談に携わっているメンバーもいますが、多くは不慣れな私たち、「ちょっとお待ちください」を連発したり、「調べておきますので来週かけてください」と答えたり、冷や汗の連続です。早くいろいろな知識を身につけ、話を聞くのにも慣れて、快刀乱麻を断つという感じの対応がしたい、と思う反面、この活動を始めた原点は女の立場で相手と共感するところにあるのかな、とも思います。
 「相談のたらい回しは駄目、自分たちで解決能力を持たなければ」と開設準備講座で聞き、そうだとは思うのですが、私個人もホットラインとしてもまだ「聞く」ことに追われている段階です。協力を申し出てくれているスタッフ(語学、カウンセリング、法律、医学、同行など)ともネットワークを作り、解決能力をつけてゆきたい、私たち独自のスタッフ養成プログラムも作りたい、と思うことはいろいろ。思いに動きがついてゆききれないのが悩みですが、活動はまだ始まったばかり、どうぞ助言と励ましをよろしくお願いします。                (働くことと性差別を考える三多摩の会・パラソル)



☆ イトーヨーカ堂セクシュアルハラスメント事件
     神奈川県下10店舗一斉ビラまき抗議行動行われる!

 1月16日(日)「セクハラではないので団交に応じない」とする会社に対し、10店舗への同時ビラまきを行いました。5団体317名の方に参加していただき、1人100枚をまききりました。ちらしをとる人や読んでくれる人は、中には「私たちも抗議したほうがいいのかしら」「女性のほうが傷つくことが多いのよね。この人はあなたたちみたいに応援してくれる人がいてよかったね」など、共感の言葉をくれる人もいて大成功でした。

     翌17日(月)、神奈川地方労働委員会の審問はじまる!

 第1回目は、会社側から先に証人尋問をしたいとの異例の申し入れがあり、当会社大和店の店長が証言しました。
 証言の内容は、前日のビラの内容は、事実でないと指摘。事件については、Sさんが加害者との件について自分のほうから店のいろいろな人に話していること、店として飲みに行くことは禁止していること、本人からの事情は、シスターのNさんからよく聞いていること、お母さんは退職について了承しており、退職届もSさん自身が持ってきたことなどを話しました。会社は、あくまでセクハラでないと主張しています。ユニオンとの事実確認会の時に何度も念押ししてお互い確認した事項についても全く拒否しています。
 次回は、その主張を突き崩す反対尋問とユニオン側からの証人としてユニオンの執行委員が証言します。
 ぜひ、多くの方に傍聴してほしいのです。よろしくお願いいたします。

   次回  2月23日(水)午前10時〜12時
   場所  神奈川地方労働委員会

   お問い合わせ  かながわ・女のスペース みずら
              女のユニオン・かながわ




☆ 3・6‘94 国際女性デー
     女がつくる女たちの時代集会のおしらせ

 国際女性デー(3・8)を記念して、3月6日、午前10時から、おんなの祭り実行委員会主催で、東京勤労福祉会館で集会が行われます。
 今年は国際家族年であり、昨年の「世帯主義」をテーマにして話し合われた経過もあって「国際家族年ってなあに」という分科会や、「女と扶養 ― 扶養される女から扶養する女へ」・「『日本軍慰安婦』を考える」・「セクシュアル・ハラスメント防止法をつくろう」・「女が働く中で見えてきたこと」・「女のホットライン、ワークショップ」・「甲山事件のビデオを見て、山田さんの話を聞く会」・「くじらとみえこの詩とコンサート」・「アジア系・レズビアン・ネットワーク」・「ヨガで更年期を楽しく!」など。
 2時からの全体会はT弁護士の講演。テーマは「女の人権 ― 性・労働・家族…」。そしてアピールをしていただく方に、我が原告、宇都宮裁判の原告、甲山事件のYさん、「女性の人権侵害アジア法廷」の日本実行委員会スタッフを予定しています。
 集会後は賑やかにパレードを行います。会場カンパとして千円。(食べでのあるメニュー(企画)ですゾ)
 ぜひとも参加を。




☆ 会計報告(93'9.〜94'1)

収入 55,000円

     内訳   切手       4,600円
           新規会員    3名

支出 54,147円

     内訳   郵送代       28,335円
           交通費       10,000円
           印刷・紙代      8,853円
           雑用品代       3,099円
           すみれの会会費  2,000円
           振込手数料     1,080円
           入金手数料        60円

前期繰越金 98,366円

差引残額   99,939円

◎ 今回、会費請求について金額を明示していなかったことにより、多く入金された方にご迷惑をおかけしました。ついては、多い金額分を次期の会費に繰入れ、次期はその分少なく請求いたしますので、ご了承ください。



☆ Aさんコーナー

   「宣誓攻撃」

 「良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います」尋問の前にこんな宣誓をすることを考えついたのはどこの偉い人なのだろう。法廷では判決により原告か被告のどちらかの言い分が正当であると認められ、否定された方はそれにより制裁を受ける。制裁を受け入れさせるための宣誓なのだろうか。だとすればこれは別に意味のないことではないのか。無意味なことをするのは無駄だと思う。無駄なことならしなくてもいい。でも、嘘を言うのにわざわざ嘘は言いませんと断ってから言うのは、やっぱり変だ。 嘘つきは泥棒のはじまりだという。ねえ、嘘をつく人は嫌いだ。本当のことしか聞きたくないし知りたくない。その嘘でどれだけの気持ちが傷つけられることか。ポーズなんかいらない。ごまかしたって真実はひとつだ。気の短い私はだから先制攻撃をしかける。白か黒。存在させたくないグレー。でも現実にあるグレー。限りなく白に近づけたい。限りなく黒に近づけたい。そのために言うべきことは、話すべきことは、徹底的に聞いてもらう。理解するかしないか、受け入れるか否かは相手の勝手、でも私は話す。敵は多い。
 その私のけしかけた攻撃を受け止めてくれた人がいた。ずるいんだよ、最初はうまくかわそうとしてたんだ。途中から気がついてた、私。でも逃がさなかった。受け止めるつもりで呼んだわけではなかったらしいけれど、でも、会えばこうなることは確実にわかっていたはず。彼の読み
違いは私がこれほど(ケリをつけることに)性急なたちだと思っていなかったこと。
 松の内も明けない京都。寒くて静かな見知らない土地。黒であることを願いながらも、でもどこかで白だとわかっていたのかもしれない。だからこそよけいに許せないグレー。明確にしたかった。2日分のアリバイと新幹線のチケット。軽い荷物にはちきれそうな心。‥‥‥最初のはぐらかしは来いと言ったか行くと言ったかだった。問題は「来て欲しい」か「行きたい」かの気持ちなのにね。始発で行って最終で帰って。一緒にいなかったのはひとりで九条のビジネスホテルに泊まった7時間のみ。ずっと車で、ふたりで、見て、歩いて、食べて、話して、過ごした滞在時間36時間8分。その1日目と2日目のふたりの関係に全く変化はないのだけれどただ、決定的な結論だけが出されていた。深夜の路上に停めた車のシートで、聞きたいか聞きたくないかを諮った上でギリギリまで話した私に、彼は嘘を言わなかった。
 南禅寺の静けさも、琵琶湖をわたる風も、宇治の陽射しも、全てをきれいなまま記憶に残すことができたのは彼のおかげだ。「僕も一応男のはしくれやから、もし好きやったりしたら自分から言います」私はその言葉をあっさり承諾した。いやな思いはさせたくないし、迷惑をかけたり負担になったり、足を引っ張るようなこともしたくなかったから。なんの無理もしない、そのままの彼でいて欲しいと思ったから。それに私は無駄なことが嫌いだ。
 とにかくそれが知りたかったこと。それで全てのグレーの霧は私の周りから吹き払われたのだ。ものすごい短期決戦だったけれど。
 今は仲の良い友人同士の、メーカー担当者である彼と売場担当者の私は、周囲の誤解の目をものともせず、今日も元気に仕事をしている(つもりだ)。ものわかり良すぎだとか、イイ女ぶってるなどという意見もあったが、突然のA子台風に見舞われた彼の心中を思うと、私はただただ萎縮するのみである。
 人と人との衝突の結果はどうも極端に走りすぎるきらいがある。断崖絶壁からころがり落ちたような気分になる必要などないのに。私と部長の場合、ふたりの隔たりは数千光年を数えても足りないだろう。その身体が分子レベルにまで分解されても、遺伝子となって何百年の時を経ても、永遠に相容れることのない存在になってしまったのだ。同じ人と人なのに。こんな不幸な事態にまで至ってしまったことを私は、とても寂しく思うのだ。



《 編集後記 》
  今回は編集後記はありましぇん、メンゴ!



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