クラブA bP2 

                   1995・2・24  発行 横浜セクシュアルハラスメント裁判を支える会事務局



☆ 裁判報告

◎ 3月24日の判決日に向けて

 とうとう3月24日(金)午後1時10分、横浜地裁501号法廷にて判決が出ることになりました。
 92年7月14日の提訴以来、13回にわたる公判を闘い抜いてきた原告および弁護団、そしてこの裁判に注目し、セクシュアルハラスメントを許さないという人々の支援が、この日どのように報われるのか、ドキドキものです。
 支える会として、この日に向け裁判長宛に「要請ハガキ」に取り組むことにしました。
 セクシュアルハラスメントの被害がどれほど広範に存在し、どれほどひどいものなのか、あなたの一言を是非裁判長に届けてください。このニュースが届き次第、早急に投函おねがいします。
 なお、判決終了後に1人およそ1,000円会費で、集いの場を設ける予定です。

 要請ハガキの宛先は次の通り  

   〒 231 横浜市中区日本大通9
        横浜地方裁判所 第2民事部
        鈴木 敏之  裁判長 宛




◎ 事実関係についての原告主張の要旨

1 被告Kの原告に対する継続的セクシュアル・ハラスメントについて

@ 被告Kは90年秋頃から、通路を通るたび原告の髪に触ったり、肩を揉むようになったため、原告は被告Kが原告の席の近くを通ることが苦痛になった。
 被告Kは、原告の席が被告Kの席から遠ざかるような内容の配置換えを提案したのに対し、原告も含めて社員らが反対したことから、原告の主張が虚偽であると反論するが、被告Kの提案した配置は、原告と被告Kの位置が離れることにはならず、かえって、被告Kが部屋に出入りするときに原告の後ろを通ることになる配置であり、反論には理由はない。
A 被告Kは原告を、接待のため新しい店を開拓したいとの理由で酒席に誘い、帰りに肩を抱き寄せるというセクシュアル・ハラスメントを行っている。そして被告Kはその約1週間後にまた原告だけを酒席に誘っている。被告Kが原告に性的関心を持ち、機会があれば性的言動ないし性的誘いを行おうとの意図のもとに原告を酒席に誘ったことは明白である。
 被告Kは、原告が関内に勤めていたことから、営業上重要な方を連れていくため案内を乞うたと弁解しているが、そのような営業上重要な人の接待のための店を、原告に尋ねること自体不自然であり、被告Kは原告が断り難いように、職務に関連する理由をつけて原告を誘ったものといえる。

2 被告Kが91年2月19日に原告に対して猥褻行為を行った事実について

@ 被告Kが、原告に抱きつき猥褻行為を始めたのは午前11時50分頃で、猥褻行為をやめたのは午後0時10分頃であり、約20分間にわたって猥褻行為を行った。そしてその猥褻行為の内容は最初後ろから抱きつき、その後首筋に唇を押しつけたり、唇に唇を押しつけ舌を入れたり、胸、尻、陰部等を着衣の上から触ったものである。

A 被告Kは、気持ちの高揚のあまり反射的、無意識的に前から原告の肩を抱いただけで、その時間も瞬間的なものであり、若し20分間も猥褻行為におよんだとすれば、その間原告が拒んだり抵抗しなかったとは考えられない、と反論する。

B しかし、雁に被告Kの供述を前提としても、取材班が11時50分に帰った後、被告Kは営業所内を熊のように歩きまわってから原告に抱きついているのであり、営業所内を歩きまわった時間は2、3分であり、被告Kが原告から体を離した時間が23時2、3分であるから、被告Kは約10分間原告に抱きついていたことになる。

C 次に被告Kの行為の態様であるが、被告Kは前から原告の肩を抱いたと主張し、その時の様子について、原告が机に向かって座っていたところに、被告Kは左側から右手で原告の左肩に手をかけたところ、原告が立ち上がって被告Kの方に向いたので、抱きついたと供述しているが、被告Kから無言で肩に手をかけられた原告が、無言で立ち上がり被告Kの方を向くなどということはあり得ない。

  原告は被告Kの行為を同僚に言葉では伝えられず、原告はTを立たせて、後ろから抱きつくジェスチャーをし、その後は泣き出してしまった。かような原告の様子から、被告Kが原告に後ろから抱き付いてきたこと、被告Kの行為が言葉では言えないような、猥褻行為であったかが分かる。

D 原告が第三者に助けを求めたり、大声を上げたりしなかった点であるが、原告が被告Kの突然の行為に対し、第三者に助けを求めるようなことをすれば、事は公になり、被告Kだけの問題ではなく、被告テクネットにまで累が及ぶことは当然予測できる。また、もし原告が大声で騒ぎ立てたりすれば被告Kのメンツを潰すことになり、被告Kとの関係はその時点で決定的に決裂することになる。そうなった場合、原告が会社をやめざるを得なくなることは明白である。
 このように会社の上司と部下という力関係の中で、部下である女性は男性である上司に抵抗できないからこそ、上司がその地位に乗じてセクハラを行うのである。

3 被告テクネットの対応について

@ 原告は91年3月14日、被告テクネットの代表取締役である社長に直接会って、被告Kの原告に対してなした行為を説明し、被告Kの処分、配置転換あるいは今後の監督を求めたが、被告テクネットは何ら対処をしなかった。

A 被告テクネットは、原告と被告Kの言い分が全く食い違っており、真実を解明することはできないと感じたが、真実はともかく現場責任者として問題を起こしたことに対して被告kを厳重に注意したのであり、被告テクネットの対応に落ち度はなかったと反論する。

B しかし、会社がセクシュアル・ハラスメントの被害者から被害を告げられたときには、まず迅速に当事者から事情を聴取する他、必要に応じて他の従業員からも事情を聴くなどして事実関係を調査したうえで、配置転換や加害者の処分など、被害者の労働環境を改善するための適切な処置をする義務が有るが、被告テクネットは、事実関係を調査することすら思い至らず、何もしていないため、被告テクネットの対応には重大な落ち度があると言える。   (高岡香)


◎ 法律的問題点について

 この裁判の法律的問題点としては、@被告Kの行為について被告会社2社に使用者責任が認められるか、A被告会社2社の対応(適切な対処をしなかったこと)が不法行為にあたるか、B出向元会社に使用者責任が認められるか、C被告会社2社に名誉棄損が成立し、謝罪広告が認められるか、をあげることができます。このうち、@使用者責任における事業執行行為性の問題、A会社が職場環境を調整する義務に違反したことによる不法行為の正否は、セクシュアル・ハラスメントの裁判では常に問題とされ得る点です。以下これらの点に関する原告、被告の主張を整理したいと思います。


1 使用者責任について

 被告Kは、就業時間中に上司たる地位を利用して、猥褻行為に及んだのだから、被告Kの不法行為は、事業の執行に密接に関連してなされたものであり、被告会社2社はこれによる原告の損害について、賠償責任を負わなければならない、これが原告の主張です。

 これに対する被告の主張を要約すると次のようになります。

@ 事業執行行為性は、「事業の執行を契機」としているかどうかで判断されるべきである。
 被告Kの猥褻行為はいきなり後ろから抱き付く行為によって開始されており、そもそも猥褻行為は職務とは何ら関係のない私的な行為に過ぎないのであるから、職務との関連性はない。
 また、事業執行行為性については、「上司たる地位の利用を契機として加害行為に及んだ場合は、事業執行行為性が認められるという見解もありうる。
 しかし、この見解に立ったとしても使用者責任が認められるのは「上司たる地位の明示的な利用そのものが被害者の性的自由や抵抗の自由を排除するものと認められる特段の事情のある場合(たとえば人事権を有する上司が猥褻行為の開始前もしくは最中に上司たる地位を特に明示して『猥褻行為に応じない場合は解雇する』旨脅迫し、現実にその蓋然性の顕著だった場合)に限られるべきである。」
 被告Kの行為は、上司たる地位を利用して原告の職場における立場を悪化させる明示の言動に基づくものでなかったから、使用者の責任は認められない。
 これは、セクシュアル・ハラスメントに関し、不法行為が成立する範囲をいわゆる「代償型」セクシュアル・ハラスメントを限定させようとする見解として捉えられるかと思いますが、それにしても極端に限定的な見解に立つものです。
 職場という逃げることのできない環境で職場の上下関係、人間関係を利用して行われるセクシュアル・ハラスメントの構造を全く理解していない主張です。

A 会社が適切な処置をしなかったことについて
 原告の主張は、被告会社2社は、被告Kのセクシュアル・ハラスメントにより、原告の性的自由、働く権利が侵害されたのであるから、労働環境を改善するため、事実関係を調査したうえで、配置転換等適切に対処する義務があったにもかかわらず、事実関係の調査すら行わなかったため、原告を退職に追い込んだ点で、不法行為責任を負うというものです。

   被告の主張の要旨は、次のようになります。

 被告テクネットの主張の要旨は、テクネットの社長は、原告に具体的な事実を質問したが猥褻行為を否定した。「捜査権限」のない被告テクネット社長がこれ以上事実関係を確認できないのは無理からぬことである。しかも、被告テクネット社長は監督不行届を注意し、被告Kに謝罪させている。原告が退職したのは原告が自分自身で垣根を作って孤立したためである。
 被告テクネットの主張はいわば、何もしなかった、社員に対する事情聴取すらしなかったことを認めながら(謝罪は、猥褻行為に対するものではないのだから、対処とはいえない)「捜査権限」がないのだから、密室での被害者を加害者の説明が食い違う以上、それ以上何もしなくてもやむをえない、と言う開き直った主張です。
 福岡セクシュアル・ハラスメント判決でも「使用者は、‥‥‥労務遂行に関連して被用者の人格的尊厳を侵しその労務提供に重大な支障を来す自由が発生することを防ぎ、又はこれに適切に対処して、職場が被用者にとって働きやすい環境を保つよう配慮する注意義務もあると解される」といっているのです。
 行為によるセクシュアル・ハラスメントは多くの場合密室で行われます。加害者が否定すれば、それ以上何もしなくても企業には何の責任もないというのはあまりに無責任な主張としかいいようがありません。   (渡辺智子)



☆ 「横浜セクシュアルハラスメント裁判 結審の真相」

 当日、501号法廷に足を運んでくださった方々はすでにご存じだと思いますが、横浜セクシュアルハラスメント裁判は、1月13日結審になりました。
 「結審」というのは、裁判における原告被告双方の主張、立証(審理)がすべて終わったという意味で、次回はいよいよ判決が言い渡されるということです。
 「えーッ」という非難とも感嘆ともとれる声がそこここから聞こえてくるような気もしますが、無理もありません。1月13日発行の「クラブA」では、「次回弁論」「その後結審」「判決」という3段階の運びになるとお知らせしてあったようですから。
 が「事実」は「お知らせ」より奇なり。結審に向けて集会などを予定していた向きには、機会がなくなり大変ご迷惑をおかけしてしまいました。
 かくいう私たち代理人も、はじめからその日の結審を予定していたわけではありません。昨年9月以降の、この種事案にしてはめずらしい和解勧告と、その実、全く実りのなかった和解手続。その後、判決手続に戻ってから、原告がまず1月に最終準備書面を提出し、それに対して次回被告が最終準備書面を提出、そこで結審という通常の型を想定していました。
 ところが、原告の最終準備書面提出期日にあわせて被告らも最終準備書面を提出してきました(これ自体は、審理促進に協力的な被告ら代理人として称賛に値します)。従って双方の主張に若干かみ合わない点もあり、その点について原告がもう一度期日を要求してさらに主張を尽くすということも可能でした。
 しかし、この訴訟は平成4年の提訴ですから、今年ですでに3年が経過します。ふつう裁判官の在任は長くて2年ですから判決期日が4月以降に先送りになると、判決書の実質的な担い手であり、3年の間、唯一移動のなかった左陪席(裁判官)の移動の時期にあたります。法廷で原被告らから直接言い分を聞かなかった裁判官に判決を書かれることだけは避けよう!私たち代理人がとっさに判断した結論でした。
 1月13日、被告らから突然提出された最終準備書面の1つ1つ全部に目をくばるのは正直言って本当に目がまわりそうでした。私などは法廷でのやりとりはそっちのけで(2人の優秀な代理人がいつも対応してくれますので)、結審にしても問題ないかどうか、被告らの準備書面に終始釘付けになっていました。
 端から見るとどうも緊張感に欠けるといわれた横浜の裁判、代理人らの胸中とは裏腹に、またまた緊張感を欠いて予告もなしに結審してしまいました。
 判決言渡しの時くらいは盛り上がるでしょうか?
 判決言渡しは次回3月24日午後1時10分から。            (中村れい子)



☆ 宇都宮セクシュアル・ハラスメント裁判(第12回)を傍聴して

 2月2日、宇都宮セクシュアル・ハラスメント裁判が開かれるので、ひさびさに宇都宮に出かけた。
 1時15分開廷。他の2つの裁判の判決言い渡しがあり、中身は分からなかったが2つとも原告敗訴。あまり気持ちの良いものではない。その上原告の人が判決文が欲しいといっているのに「あとで郵送するから」と否定している。弁護人が来ていないからなめているのか。判決文をもらうためにわざわざ出廷しているのに「あとで郵送」という対応はないと思う。
 その後、第12回口頭弁論が開始された。準備書面のことでやり取りがあり、前回から引き続きS被告への斉藤代理人からの主尋問がなされた。斉藤代理人からの尋問にS被告はよどみなく答えた。1992年(平成4年)6月3日、K支店長との面談では『(Kさんとの間のキス事件は)合意の上です』と言ったら、K支店長は『わかった』と力強く言った。しかし、6月2日以降は業務上のこと以外は得意先、同僚からも話しかけられないようになり、食欲も落ちてきた、などと証言。
 「Kさんは孤立していず、むしろ私が孤立させられた」「6月12日、K支店長は謝れと言い、6月3日にはわかったと言ったのになぜかと思った。私は精神的に追いつめられていたので、何でまた謝らなければならないのかと胸が苦しくなってうずくまりました。それに対しKさんは『自分の主張をしない人は出世が遅い』『女だと思ってなめんじゃない』とヒステリックにわめくので恐怖心で体がふるえた」…自分こそが被害者だと言わんばかりの演出で答弁するS被告。この間2回の傍聴にこれなかったので、私は初めてS被告を見た。開廷する前に、傍聴席の前から2番目に座っていた私は、ふてぶてしそうな男が入ってきてコートを脱ぎながらジロリと傍聴席を眺め回し、紺の背広姿になるのを見た。それが被告Sだと気がついたのは裁判が開始されてからだ。でも、おかげで真正面からS被告の顔を見てしまった。髪はボサボサで背広にはふけがつき、えりが立てたままになっていたり、あまり身だしなみに気をつかっている様子はなく(でもこのくらいは普通かな)、ましてや「女だと思ってなめんじゃない」と女に言われたくらいで恐怖を感じるような小心者ではなさそうだ。むしろ、ジロリと見られたときゾーッと恐怖を感じさせられたほどの凄みがあった。
 そして、主尋問の最後は極めつけの演出だった。「身に覚えのない訴訟を起こされ、私と私の家族は大きなダメージを受けている。私たちこそが被害者である」と。このシナリオは男の言い逃れの常套手段ながら、それなりにみごとでしたよ。
 続いて反対尋問に立ったF代理人は、より歯切れよくよりみごとにS被告を追求し、嘘を暴いていきました。「いつも会社に帰るのは何時ですか」「9時頃です」‥‥‥「Kさんと同行していたときもそうですか」「ケースバイケースですよ」‥‥‥「女性の時間外は8時20分までですが、知ってますか」「知らない」「営業に出かけるときアポイントメントはとるのですか」との単純な質問の返答がなんとも歯切れ悪くいい加減で、主尋問への返答との違いを際立たせていたのが、印象的だった。
 ホテル・ココ事件について、前回の裁判でS被告が書いた地図ではホテル・ココにはたどり着けなかったのだが、と言う尋問にS被告は大慌て「いや、二股の道があってそれを右に行ってから、右折する」などと弁解。二股の道を意図的にごまかし、大きな道路からすぐ行けるような証言をしたのだ。原告側は実地調査を行い、それらの意図的嘘を1つ1つ、写真等の書証で明らかにした。
 Kさんが『ホテルを見たい』と言い、ウキウキした様子だったなどと証言したが、ホテルを見るために入口まで行く必要はない訳だし、執拗に料金表を見なかったというのも不自然‥‥‥と被告の主張のごまかしをついていく。
 さらに不自然なことは、Kさんが届け出のないアパート(実は兄さんの家)に入ったのを見たという証言。その日は夜、車に乗ってたまたまビールを買いに行って、たまたまKさんが駐車場から車を降りて歩いてアパートの前を通るのを見た(入ったのを見たのではない)のだと言う。アパートの電気代がKさん名義になっているのをいつ知ったのかとの質問には、シドロモドロ。斉藤代理人が焦っていたのがおかしかった。(斉藤代理人が探偵でもやったのかな??)
 A代理とのうわさの件では、Kさんに『A代理と話をするとみんなが誤解するよ』と言ったことで「どんな誤解か」と問うと、「男女のうわさ」と言い、「そのうわさは誰からどう入ったのか」と追求すると「覚えていない」とごまかす。職場で男性の上司や同僚と話をしただけで『男女のうわさ』になってしまうとすれば、そういう職場こそおかしいんじゃないのかなあ。それを上司が言いふらすとすれば、会社ぐるみのセク・ハラ構造と言えるんじゃないって思うよね。多かれ少なかれ、男女関係が性的ニュアンスを含んでうわさされることはあるだろうけれど、そんなうわさだけ出回っているこの会社はかなり異常だ。何か問題が起きるとすぐに喫茶店や居酒屋で話し合うというのも尋常な職場ではない、と私は思う。そんな社風の中でKさんへのセクシュアル・ハラスメントはあったんだ。そのことを明らかにして会社の責任も追求したい、‥‥‥まだまだ攻防は続きそうな状況です。ご注目を!   (Q)

 次回口頭弁論、S被告への反対尋問です。

  次回の公判  4月20日(木)午後1時15分開廷・1時抽選
  次々回の公判  6月22日(木)午後1時15分開廷

   ◆いずれも宇都宮地方裁判所301号法廷




☆ 1月30日・八王子裁判

 公判は6回目。校長に対する反対尋問でした。セクシュアルハラスメントを全面否定する校長を相手に、S弁護士が善戦。様々な角度から叩いてみて、多少はホコリも出たかなと感じた公判になりました。
 平成3年のセクシュアルハラスメントについて、その前後の事実関係をS弁護士が質問。校長は肝心なところは「覚えていません」「判りません」「事実ではありません」に終始。しかし、酒席では(場を明るくしようとして)「愛しているよ」と言うことがあると証言。「そうすることであなたは相手が喜ぶと思っていますか」とS弁護士。拍手ができなかったのが残念でした。そう、こういうことがセクシュアルハラスメントの構造なんですよね。男が全く悪意なく(しばしば善意で)していることが、女には不愉快なことがあるのです。せめて、それを指摘されたら開き直らないで欲しいものです。
 その他、それ以前の校長とA子さんの(比較的良かった)関係について、それ以後の(悪化してゆく)関係について、S弁護士が質問しましたが、「自分ははじめからA子さんを評価していなかった。誉めたのは、どんな人でも誉めて育てる主義だから。」とか、「教育実践についての意見の衝突はすべてA子さんの思い込みによる事実誤認によるもの」との主張で、結果的にはA子さんの証言を全面否定するものになりました。
 被告側弁護士からは再び土下座論争。「土下座というのは地面に両手をついて頭を下げることですよね。」なんて、何を考えてるんだか。土下座を認めるとセクシュアルハラスメントを認めることになると思ってるんですかね。しかし、この件で校長が関係者(A子さんの証言で名前の出た人)に電話をかけまくったことが判ってしまい、これもこちらのポイント。セクシュアルハラスメントの後で土下座をしてくれたらこの裁判はなかったかもしれないのにね!
 裁判長からは「あなたはこの件で訴えられていることについてどう思っていますか。」との質問。「遺憾に思っています」「遺憾に思っているとはどういうことですか」「腹の中が煮えくり返っているということです。」八木裁判官(この裁判を最初から担当している女性の裁判官)からは、「あなたはセクシュアルハラスメントをしたかどうか覚えていないのか、それともしていないのか、どちらですか。」「しなかったことをはっきり覚えています。」裁判官も事実関係をそれぞれの方法で問いただしたのだと思います。私たちから見えなかった校長の表情はどんなだったのでしょうか。
 その後、清水元教頭の証人申請について、S弁護士が意見を求められ、「必要ないと思います」と答えると、3人の裁判官が合議。その後「原告は平成3年以後のすべての事実を争うのですか」との質問。「全てを争います」と答えると、「では、清水さんを証人として採用します」との結論で閉廷になりました。
 裁判の後のS弁護士の話によると、セクシュアルハラスメントの事実だけ争うのであれば、清水証人は必要がない。しかし、その後の人事等についても争うと答えたので採用が決定したのだろうとのこと。次回はA子さんに対する人格攻撃が激しく行われることが予想されますが、皆で支えていきたいと思います。傍聴をよろしくお願いします。   (働くことと性差別を考える三多摩の会・パラソル)

  次回の公判  4月24日(月)13時10分−14:30
           八王子地裁 401号法廷




☆ Aさんコーナー

   「方針状態」
 休日のけだるい午後、台所で好物のしじみの佃煮をつついていた。ふと、まな板が目に映った。包丁が1本、縦に置かれている。その上にもし自分が乗っかったとしたらどんな気分だろうかと考えてみた。
 「判決を受ける」という受け身な言い方。確かに「下される」ものではあるのだが、なんだか卑屈な感じがしないでもない。真実の認定に、そうへり下ることはないわけだ。
 1月13日金曜日、我が横浜セクシュアルハラスメント裁判は結審となった。誰もが予想していなかった意外な展開だ。‥‥‥そして、"ぶっとびのA"がフツーの女の子をしている場面でも異変があった。
 訴訟のこの展開は意外であったが、こちらの「決心」は予想がつかないわけではなかった。いつ、この時を迎えてもおかしくない状況を、好転できないまま、ずるずると続けていたからだ。つまり、遅かれ早かれ終局は訪れたということだ。たまたまこの日だったのだ。この日でなくとも、明日がそうなるのかもしれなかった。それは勝ち負けなどではなく、要するに月並みな、どこにでもある、ひとつの人間関係が終結した、ということに過ぎない。
  「時を遡るチケットがあれば 欲しくなるときがある あそこのわかれ道で 選びなおせるなら、って」
 さだまさしの「主人公」である。文法的に倒置法が多用されたこの歌詞は、こうして抜き出してみると結構クドい。そして暗い(笑)。
  「もちろん 今の私を悲しむつもりはない 確かに自分で選んだ以上 精いっぱい生きる」
 このあと、これも結局ラブソングの一種であるから、
  「そうでなきゃ あなたに とてもとても 恥ずかしいから」
 と続く。だが、これをフラれ女(男ではないような気が、私はする)のモノローグと思ってはいけない。
  「あなたは教えてくれた 小さな物語でも、自分の人生の中では 誰もがみな 主人公」
 だから、
  「あなたは思い出の中で 時折、支えてください 私の人生の中では 私が、主人公だと」
 こうなると、彼女みずから選びとった主体性の存在と、それに、過去を脱ぎ捨て、今、これからを明るく生きていこうという希望すら感じられるではないですか。
 でもね、誰もそんなこと心がけちゃあいないのですよ。
 NHKでは松平さんががんばっている。最近では阪神大震災の特番で見かけた。あの事件以来、すっかりブラウン管から遠ざかってはしまったけれど。
 最初のうちは、その何事もなかったかのようなアナウンスぶりが腹立たしく、侮蔑の念すら抱いたものだった。しかし、淡々とリポートを続ける様子をずっと見ていたら、なんだかかわいそうに思えてきて。自分の名声はともかく、潰してしまったNHKの威信をずっと背にしょっているようで。
 辞めてしまえばそれまでなのに、きっと穏やかではない風当たりの中に居続けて居る松平さんは、考えてみたらちょっとエライかもしれない。
 人間関係をすぐ諦めてしまう私には、失った信用や損ねた機嫌を回復するための努力はあまりできない。したいと思っても、許しを得るまでの屈辱に対する耐性があまりにもなさ過ぎて、いつも挫折する。
 「何があっても、次の日は平然としていればいいのよ」と友人から言われたが、「悪かったかなぁ」とか「気にしてないかな?」などと思うと、それだけで普通の対応など、私にはできなくなってしまう。
 そのあたりが実に普通ではないと、あの日、Oにもかなり言われた。
 ‥‥‥不思議と、それほど悲しくはなく。ダメージははかりしれないほど大きいけれど、こみ上げてくるものがない。ただ、外部に働きかける力が湧かないだけ。一定量以上の努力など、全くする気にはならない。
 考えた通りに運ぶ物事。予想通りの運命。世の中の事象の形式は大体決まっている。本当にそうならば希望や願いなどは意味を失う。「楽観的に対処」する事はともかく、「悲観的に準備」するなど無駄である。
 満足するのも癒されるのも、納得するのは自分だ。何によってそうなるかではない。自分で何を得るかだ。
 ‥‥‥とりあえず一審は終わる。大事な人は一審には間に合わなかった。
 日々のかけらをぽつり、ぽつりと思い返す作業が、しばらくは続くのだろう。



《 編集後記 》

 去年の12月から通いはじめた職場は東西線の早稲田の近くです。なので横浜に来るのが楽になりました。再び「お茶汲み」に悩まされている日々ですが、前と違って仕事はやりたかったことなので、しばらくガマン(お茶汲み大好きおばさんは3月いっぱいでいなくなる!!!)と思っていたら、一緒に入った同僚が、お茶汲みが原因で辞めると言い出してしまいました。(とんがらし)

 関西方面の方々、ご無事でしょうか?知人・友人のなかでは、ともかく無事であるとのことでホッとしていますが‥‥‥。最近は余震が心配です。もうすぐ春とはいえ、寒い日々が続いています。遠いところからですが応援しています。私は来年度もまた今の仕事を続けられることが決まり、一息ついています。公判日にはまた会いましょうね。(P)

日本中を揺がした阪神大震災。被災された方々に心からお見舞い申し上げます。私たちの裁判もいよいよ判決。ハラハラドキドキ。でも、女たちの力で裁判所の古い体質を揺がす勝利判決をかちとりたい!!(Q)

 春の中に夏のきざしがあり、夏の中に秋のきざしがあり、秋の中に冬のきざしがあり、冬の中に春のきざしがあるのだと昔、古文の時間に教わった。本当ならうれしいが。(A)




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