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                   1996・11・25  発行 横浜セクシュアルハラスメント裁判を支える会事務局



☆ 第7回口頭弁論報告

 10月8日、第7回口頭弁論のその日、最終意見陳述を控え、本日結審との緊張感がただよっていた。101頁に及ぶ最終準備書面はこれまでの私たちの主張を集大成するもので、3人の弁護士の意気込みが脈打っているものだ。
 開廷―――私は目を疑った。裁判長が違う。いつ変わったのだろう。
 裁判長「この間控訴人及び被控訴人より準備書面が出ていますが、何点か釈明したいことがあります。被控訴人に対して、清水建設との関係で指揮監督はどうなっているのか。出向のときに取り決めはないのか。ないことはないはずなので次回まで出して欲しい。昇級昇格についてはどちらでどう決めているのかに関して文書で陳述して欲しい」(オット、突っ込むじゃん。)
 そして更に、
 裁判長「最近のこの種の事件についての国内の裁判は知っていますが‥‥‥被控訴認側からはアメリカの判例学説についてジュリストの研究が書証として出されていますが、海外の判例等についてもう少し勉強してみたいので判例学説等の資料がありましたら、どちらからでも結構ですので提出願いたい。原文(外国語でも良い)で構いませんので。(裁判官の)構成が変わったこともあり、もう1回だけ期日を入れたい」
 というわけで、次回が結審となり、次回の日程を決めて終了した。

  次回第8回口頭弁論  12月10日 午後1時半
     東京高等裁判所 809号法廷です。

ぜひ、傍聴ください。これが最後の口頭弁論となります。




☆ 最終準備書面の抜粋

第1 本裁判の意義

 本件に先立つ福岡裁判が明らかにしたもの

 @ セクシュアル・ハラスメント(以下S・Hと略)の概念
 S・Hの法的要件について、その具体的事案を通して検討している。S・Hという言葉を用いてはいないものの、S・Hの概念に含まれる要件を検討し、その行為の違法性を確認した。すなわち、S・Hとは、「相手方の意志に反する性的行為」である。
 その後労働省の委託により出された「女子雇用管理とコミュニケーション・ギャップに関する研究会」報告書(93年10月)では、S・Hは「相手方の意に反した、性的な性質の言動を行い、それに対する対応によって仕事を遂行する上で一定の不利益を与えたり(対価型)又はそれを繰り返すことによって就業環境を著しく悪化させること(環境型)」と定義されている。

 A S・Hによる被侵害法益
 被害が重大な人権侵害であることを明らかにした被侵害法益は、性的自由、働く権利、差別されない権利である。S・Hは人権侵害であり、被害者の名誉や個人としての尊厳を傷つけるものである。

 B 企業の責任を明確にした。

2 本裁判の意義

 福岡S・H事件の被害内容は、環境型のうち、性的性質のうわさを流されたというものであるが、本件との違いは同じく環境型に属するが、重大な身体的接触による被害であること。
 このような場合、通常、被害者と加害者が2人きりの場面で加害行為がなされ、目撃者がいない。そのため、立証方法が限られ、被害者が被害を告発するにあたっての壁が厚くなる。
 それでも、事実関係を詳細に検討し、双方の供述の信用性を的確に判断できれば被害の救済はできると、本件提訴当時には控訴人は考えていた。しかし、一審での敗訴を経て、女性および性的自由の侵害を受けた女性の被害実態に対する固定観念が存在し、その固定観念が裁判所に事実を的確に判断することを妨げる状況が存在していること、これを改めるための材料を提出する必要があることを認識するに至った。キャサリン・マッキノンによればアメリカでも裁判官の偏見により女性の訴えに適切な判断がなされなかった例があるという。これを是正するためにアメリカでは裁判官に対する研修や教材が準備されているという。
 本件がS・H裁判全体に及ぼす影響は重大である。

第2 本裁判で求められる視点

1 重大な人権

 @ 性的自由の侵害
 A 働く権利の侵害
 控訴人は被控訴人Kの加害行為により、望まない性的行為をしかけられ、性的自由を侵害され、その結果敵対的な職場環境に置かれ続け、更に被控訴人テクネット社および被控訴人清水建設のきわめて不適切で違法な対応によって、結局被控訴人テクネット社を退職せざるをえない状況に追い込まれ、働く権利を侵害された。

2 本裁判の背景   (略)

3 求められる視点とは
 S・Hの被害実態を見据えるという点について、原審は重大な誤りを侵した。すなわち、「視点」を誤ったのである。

 @ 従来の性暴力と女性の性的自由
 刑事事件において、被害者は主体ではなく、捜査の対象であり、被害実態に関する充分な分析がないまま、社会の固定観念を前提として捜査が進められるために捜査機関が有する観念に合致しない被害写像は裁判以前の段階で排除されてきた。その意味で、従来刑事事件において処罰の対象とされてきた「性暴力」をもって、新たなS・Hの概念とされてはならない。

A 性暴力に直面した女性の行動・心理に対する固定観念を払拭すること(河野意見書より立証)

B S・Hの侵害行為に用いられる心理的圧力

C S・H被害の重大性
1. レイプトラウマ
2. セカンドレイプ
3. 謝罪広告の必要性
 被控訴人テクネット社および清水建設が問題解決のため何ら適切な対応をしなかったため、控訴人はやむなく退職するまで劣悪な職場環境に置かれ、同僚から孤立させられ、その結果、やる気のない人と評価され控訴人の名誉は著しく侵害された。
 その名誉回復のためには金銭賠償だけではなく謝罪広告が必要なのである。

第3 原審の判断の不当性について


1〜5 略

6 原審判断の奥にあるものに対する根本的な疑問
 河野意見書は「原告Aが述べている被害事実及びそこでの行動や態度には何ら不自然なことはなく、むしろ職場でのS・Hの被害にあった場合に女性達がとる、きわめて自然で一般的な行動や反応である」と結論付けている。
 しかしながら、原審は正反対の判断をした。
 原審の本件に対する理解によれば、控訴人は嘘をついて訴訟を提起したということになる。
 原審を批判的に検討するとき感じる根本的な疑問は控訴人本人ひいては女性一般に対して予め不信感を持っていたのではないかということである。すなわち、「女性は性的被害に関して嘘をつく可能性が少なくない」「女性はいざとなると何をするか分からない」というような根拠のない、しかし頑強な不信感の存在を疑いたくなる。
だが、控訴人には嘘をつく「動機」がない。多くの負担を覚悟してそれでもなお提訴したのは、被害を受けた女性が抱く切実な被害回復への思いを実現するためである。

第4 控訴審でより明確になった本件事実

1 被控訴人KのS・H行為   略

2 社内でS・H行為が発生した裁判の被控訴人テクネット社の対応

@ 控訴人は控訴審でBさんの陳述書及び補充書(Aの前任の女性が被控訴人Kに同様のS・Hをうけて社長に訴えて退職した事実の書面―――筆者注)を提出した。

第5 被控訴人清水建設及びテクネット社の責任について

1 被控訴人会社らの使用者責任について

 @ 被控訴人Kと被控訴人会社らとの使用関係
 A 被控訴人KのS・H行為の職務関連性について

2 被控訴人テクネット社の不法行為について

3 被控訴人清水建設の不法行為について

4 謝罪広告について

@ 被控訴人テクネット社及び清水建設は使用者として被控訴人KのS・Hについて適切な対処をすべき義務を負っており、少なくとも他の従業員に対する正確な事実の公表、被控訴人Kの配置転換、就業規則等に基づく適切な処分をすべきだった。しかし、何ら対処せず、反対にS・Hを受認するよう要求する態度に終始した。そのため、控訴人の職場環境は劣悪なものとなり、従前のように積極的に仕事をし得ない環境となったが、他の従業員に対し正確な事実の公表をしなかったことから、被控訴人は他の従業員から真面目に仕事をしなくなったとの評価をされるようになった。
 控訴人は被控訴人会社らが適切な対処をしなかった結果、職場から排除されたことによって名誉を著しく侵害され、何ら回復されていないため名誉侵害は継続している。

A 被控訴人会社らが適切な対処をしなかったその根底にあるものは、働く女性の譲歩忍耐によって職場関係の和を図ろうとする、いわば男性中心の伝統的職場感である。従業員も伝統的職場間を持つが故に控訴人を職場の秩序を破壊するものと扱い、またいわば村八分の扱いをしたものといえる。従って、控訴人の名誉を真に回復するためには金銭賠償だけでは不十分であり、被控訴人会社らの責任が明確にされる謝罪広告が必要でありかつ相当である。



☆ 名古屋高裁判決

 新聞ででしか今はわからないのですが、こちらに紹介させていただいた裁判の判決は、一審判決を金額的には上回って出されました。
 金沢地裁の判決は、金額的には勿論ですが、内容的にも納得がいかないものであったことを記憶しています。
 もっと調べて今回の高裁判決の内容について検討したいと思います、まずは参考までに。

96年10月31日 「朝日新聞」
石川の「セクハラ」訴訟 2審も社長に慰謝料を命令

 石川県珠洲市の女性(48)が、勤めていた鳳至郡能都町の建設会社の社長(55)からセクシュアル・ハラスメント(性的いやがらせ)を受けたとして慰謝料500万円などを求めていた控訴審の判決が30日、名古屋高裁金沢支部であった。笹本淳子裁判長は「セクハラ」の言葉は使わなかったが、婦女暴行未遂の事実などを認め、「行為自体が違法で人格の尊厳性を損なう」と、社長と同社に138万円を支払うように命じた。
 判決によると、女性は1991年に入社し、社長宅で家政婦の仕事についた。その直後から社長に体を触られるなどした。同年3月末に暴行されそうになってから言い争うようになり、8月に顔を殴られ、9月中旬に解雇された。
 金沢地裁輪島支部の判決では、初めて「セクハラ」の言葉を使って被害を認定し、80万円の慰謝料を支払うように命じていた。



☆ 宇都宮セクシュアル・ハラスメント裁判 第20回口頭弁論(10月31日)

 被告会社側が喚問した証人Hに対し、会社、被告S、原告側の3者から尋問があった。
 証言台に立ったHは、当時、被告Sと同じ支店代理という肩書きを持っていて、Kさんと被告Sのペアが解消した後、しばらくKさんとペアを組み、得意先係として営業に回っていた。Kさんが、被告Sにセクシュアル・ハラスメントを受けたことを初めて打ち明けた社員でもある。
 会社側からの尋問で、Hは当然会社側が作ったストーリーに沿って代理人の質問に答えていたのだが、事件の当事者たちの様子を客観的に見ていたかのように、賢く上手に答えていたことが印象に残った。その背中を傍聴席から見ていると、背筋が寒くなるほどだった。
 ただ、Sにとっては、はなはだ迷惑な証言がいくつか出てきた。たとえばホテル事件。このことは、Kさんから聞く前に、Sからも聞かされていた。『Kさんがホテルを見たいと言ったので、ホテルの前まで行ったことがある』と。しかし、その話を聞いた時、HはSの話を冗談だと思ったという。一方、Kさんから、「実は、Sにホテルに連れ込まれそうになった」と打ち明けられた時は、本当の話だと思い、その日のうちに上司に報告している。キス事件についても、「Kさんは、『Sからいきなりキスされた』と言った」と、Sの同意説をあっさりとひっくり返す証言をした。
 Hは、SよりもKさんの話を信用していたことが、証言の中では何度も繰り返し出てきたことが、今回の大きな特徴だった。にもかかわらず、Hにとってセクシュアル・ハラスメントは、他人事でしかなかったことが言葉の端々から滲み出ていた。
 次回は、被告S側から申請のあった、同僚Mが証人となる。Mは、Kさんの人格攻撃をネチネチとやるだろうと予想されている人物。(すみれの会 ビーチ)

   次回公判  来年3月14日の予定

     宇都宮でお会いしましょう。




☆ Iさんからの寄稿

 Iさんは、女のスペース"みずら"に連絡のあった方で、セクシュアル・ハラスメントを社長から受け、裁判を始めたばかりだとのこと。こうした裁判をやっている人と話をしたいということで、早速我が裁判への傍聴をお願いし、原告Aさんとの話し合いをしていただいた。その彼女の事件について、限られた紙面で申し訳ないけど、紹介してもらうことにしました。   (P)

 6月10日、異動勧告と、新人を私の席に座らせるとの支持を受け、居場所を失った私は、異動も退職も受け入れることはできないと答えた。体調をこわしてもいたので、休暇を取得し、調停を経て、7月に提訴した。
 社長は、会社では社長室で、私の自宅へは深夜の電話で、性的関係や同棲を求め、秘書兼愛人を要求した。私の拒絶の固い意志を知ると、やはり社長室と深夜電話で罵声をあびせ、威嚇などしていやがらせをして、私は殺されるのではないかと恐怖を感じるほどだった。
 9月20日、第1回公判。事実関係の食い違いのため、裁判に切り替えた旨を述べ、被告からは、訴状に対して一切の否認と各請求の棄却の答弁書が提出された。
 私の請求は、社長の直筆の謝罪文(書式指定)と、会社都合での退職の2点のみ。被告は調停時から、異動は秘書として不適格のためだとし、私の時間外手当の突出や社長の夫婦喧嘩のためにホテル住まいをするのは私が原因など、意味不明の内容を主張していた。
 10月11日、第2回公判。私は、社長と私の証人を申請し、証拠の一部に、6月に社長が弁護士に宛てた私の悪口と自分が言ってしまった「寝る関係」の言い訳や正当化、「辞めさせるつもりだった」としっかり自白している手紙を提出した。被告は否認の書面を提出。私を秘書では採用していないと今更言い出し、セクハラを受けた者は欠勤や退職をするが、私がそうしていないのは何もなかったからだ、私の神経症からの病気休暇は仮病だといい、まさに品格の無さを晒した。
 11月12日、第3回公判。法廷外で裁判長と話し合いがもたれた。私から、被告のいつも抽象的な内容に対して、事実関係を更に具体的に主張した。被告はよほど言い分に困っているとみえ、主張に進展がないし具体性がない。
 次回も法廷外で11月25日に行われる。
 私は、事実を正してほしいと、出来事の流れを記述に沿い、その折々の心情を綴った陳述書を提出済である。   (I)




☆ 会計報告(96.7.21.〜96.11.24.)

収入   42,000円

     内訳   会費   33,000円
           カンパ   9,000円

支出   12,520円

     内訳   郵送代      5,070円
           印刷・紙代    7,450円

前期繰越金  56,897円

差引残額    86,377円

◎ 会計より
 前号のカンパ及び会費の納入についてお願いしましたところ、この通りの結果となりました。久々に5万円を大幅に上回る差し引き残額と喜びたいところですが、今号の郵送費及び紙代・印刷代は支出のタンには掲載されていません。したがって、この支出によってすぐさま5万円弱の残額となるわけで、財政難は引き継がれることになります。
 幸い?年会費の切り替え時期にあたり、再度会費納入を要請することが出来る?ので、ちょっとは良い正月を迎えられるのではないかと期待しています。
 裁判は10月8日で結審の予定でしたが、新たな裁判長の前向きとも思いたい要請によって、12月10日になり、判決は来年に持ち越されました。終盤になっての意外な展開に戸惑いつつも、良い判決で終わらせたいとの想いは、Aさんはもちろん、弁護団、支える会、クラブA購読者みんなの共通のものです。もう少しがんばってみましょう。
 年会費は、個人は3,000円、団体は5,000円です。よろしくお願いします。



☆ Aさんの近況
 4ヶ月勤めた職場を辞めさせられてしまいました。やっと親から独立したのに!仕事を紹介し
てください。ご連絡お待ちしています。
 「金がない、職もない。100%綿毛布が恋人の今日このごろ」‥‥‥A子節です。



《 編集後記 》

 今年ももう残りわずかになってしまった。締め切りに追われる仕事は、すでに年末モード。今年も自分のことで忙しくて傍聴にもほとんど行けずに申し訳なかったと小さくなっています。私にとって重要な別の活動で大きなプロジェクトを終わらせつつあるのが今年よかったこと。一方でだいじな友人を2人も失ったのがつらい。1人は自殺、1人は不慮の事故。(とんがらし)

 仕事で出会った暴力の被害者と一緒に法律扶助協会に行ったら、「10年も前の事件なんてもう時効ですよ、どうしてそのときに言わなかったんですか」と責めるように言われた。結論はともかく、言い方の冷たさにまだ腹が立っている。いつかどこかで抗議したい。(パラソル)

 来年の3・8国際女性デー女たちの祭りのテーマは「女が世界を変えなくちゃ!"女"がにぎやかに」と決定。はなまる女は集まれー。12月10日結審です。さいごのがんばりで来春よい判決が出ることを祈るばかり。3・8に吉報を届けられますように。(Q)

 最近、新たな自分に目覚め、お肌を気にしたり、今後の日本の産業の行方に身構えたり今までのPとはずいぶん違ってきたみたい。おかげで、様々なジャンルの女たちと知り合いになった。しかもやけに楽しい。だって、元気な女たちばかりなんだもの。年齢を問わないおもしろい仕事にありつけるかもしれない。更年期が追っかけてきているけど、追いつかれる前にモノにしたいものだわん。(P)



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