魚肉が沈殿していることがあるので、よく振ってお飲みください。
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05.07.10


朝刊を取りに出た。



 ドアを開けた瞬間、目に飛び込んできたのは
足元に転がる砕けたツバメの巣と、4羽のヒナの姿。
なんということだ!
 夕べの雨が滲みたのだろうか、今年作られた新しい巣が落下したのだ。
4羽のうち、2羽は打ちどころが悪かったのか、死んでいた。
しかし、2羽はケガもないようで生きていた。
死んだ2羽は、まだあたたかかった。落ちて間もないところだったらしい。
砕けた巣の中でもがいている2羽を拾い上げているあいだ、頭上で親鳥らしいツバメの声が
けたたましかった。




 
(右写真:マウスオンでチェンジ)
近所から脚立を借り、少々の巣材とヒナをザルに入れ、
巣があった場所の1mほど下に吊ってみた。

ザルに移そうとすると、ヒナは、くるまっていたティッシュを細い足の指でしっかりと掴み、放さなかった。
先ほど壊れた巣から拾い上げるときも、死んだ兄弟の足をギュッと掴んでいた。
その力の強さが、命を手放すまいとしている力に思えた。
苦手な高所作業。しかも、カラスよけに張ったきゅうりネットが邪魔で、しっかりと立つこともできない。
壁には引っかかりも無く、それ以上高所には吊れなかった。

しばらく様子を見たが、戻ってきた親鳥は巣があった高みばかりを探して、
数十センチ下にいるヒナたちに気がつかない。
もう発見してから2時間が経過しようとしている。
この時期は1日中、朝から晩まで親鳥にエサをねだって食べ続けるはずである。
2羽が互いに暖めあっているので冷えることはなさそうだったが、いかんせん地肌の見えるヒナである。
ことは一刻を争う。

何かいい方法はないかとネットで検索した。カップ麺の容器がいいらしい。段ボールでも何でも、とにかく、
もと巣があった場所に近くないとダメらしかった。同じくネットの記載に、
「生きる資格を失ってしまったヒナ達」
と、あった。
前後の文章を読めばなるほど確かにその通りで、ここだけ抜き書きをしては誤解を招いてしまうだろう。
しかし、自然の摂理に逆らって私がこの2羽を助けたところで、自然がそれほど腹を立てるとも思えなかった。
いや、巣が我が家の玄関先に作られ、落下して、それを私が発見したことも既に運命の一部なのだ。
私が見つけた以上、なんとしてもこの2羽は助ける。

また脚立を借り出し、非常食に買っておいたカップ麺の中身をあけて巣材とヒナを移し入れ、
手が届く最上部、巣があった場所の直下あたりに布ガムテープで貼り付けた。






待つこと数分。
来た。親鳥が来た!




それでもまだ、見慣れないおかしな物体にとまどっているようで、
カップのそばでホバリングをして様子を窺っていた。
そのとき、
「ピャァ~、ピャァ~」
と、ヒナが鳴いた!



 
(左写真:マウスオンでチェンジ)
さっきまで全く声を上げなかったヒナたちが、親鳥の羽ばたきを聞いて安心したのか、
大きな声で鳴き出したのである。
そしてついに親鳥がヒナにエサをやった!
カップに取り付き、ヒナたちの面倒を見だした。


一件落着と思いきや、ガムテープでサイディングが剥がれるかもしれないという意見があり、
致し方なく、きゅうりネットを撤去し、サイディングの僅かな窪みを利用して、
園芸用色つきの“ねじりっこ”で何とか落ちないようにとめてみた。
もうあと1週間か10日で巣立つはずである。その間だけもってくれればいい。
ヒナの数が減った分、育ちはよくなるはずである。
50%の確率で生き残ったのだから、運も強いはずだ。






庭のガマズミの根元に、2羽を、埋めた。

「生きる資格を失ってしまったヒナ達」のあとは、こう続く。
「でも、他の生き物の食料になると言う、大変重要な使命を持っている」

ツバメのヒナは、普通に巣立ってもその2割しか成鳥になれないとも聞く。多産なわけだ。
野鳥をむやみに保護してはいけないことも知っている。
しかし、玄関先でヒクヒクしているのをまたいで通り、ネコかカラスにでも持って行かれるのを待つなどということは、
到底できるものではない。
物事は何でも、場合によるだろう。

運のなかった2羽は命を失い、虫やバクテリアの食料となり、土に還る。
死ななかった2羽は鳥好きな人間に拾われ、親の元に帰った。
でも、このあとはどうなるか、もうわからない。

幸運を祈るのみである。

※ 04.04.25~06.19 ツバメの巣作り~ヒナ巣立ち  ※ 05.07.19 ツバメ巣立ち


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